信濃錦タイトル画像

はじめに
防腐剤無添加酒の開発
酒造好適米全量使用と契約栽培
 原料米と酒質
 酒造好適米
 美山錦
 産地指定と
 生産者指定
 契約栽培
 農を考える
純米酒へのこだわり
信濃錦の味わい
顔のみえるということ
最後に
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契約栽培田の様子
主要製品のご案内
お求めは
蔵元情報

 私共では、創業以前に米穀商を営んでいたことから、代々、良質な原料米の確保は家訓の様なものとして歩んで参りました。
 ここでは、より一層の品質向上を目指し、原料米の保護育成と安定確保のために、酒造好適米全量使用へと踏み切った昭和57年より今日まで、私共が進めて参りました原料米施策につきまして、お伝え致したいと思います。

 原料米と酒質
 ご存知の通り、日本酒の主原料は米です。しかし一言で米と云いましても、品種は様々で、更に同じ品種でありましても、産地や生産者により出来不出来があります。その様な中から、自分が目指す酒造りに適した米をどの様に選ぶかで、仕上がる酒は全く変わってきてしまいます。
 ワインは農産物である、とよく云われます。それは、原料の葡萄の出来によって、酒質が大きく変わるからですが、また良質なものを生産するワイナリーは、殆ど全て自ら葡萄を生産し、葡萄農家でもあるからとも云えます。
 日本酒の場合、米質が酒質に与える影響はワインほどではないかも知れませんが、質の悪い米で美酒を醸すことは無理な注文と云えるでしょう。極端な話、屑米の様なものを使えば、酒質が圧倒的に悪くなることはご理解戴けると思います。また、同じ杜氏が同じ品種の特等米と2等米を使って醸した酒を比べれば、やはり大きな差が出てきます。
 良質な原料米の確保は良酒造りの第一歩であると共に、腕の良い杜氏の技が、更にその良質米の良さを最高に引き出しうると考えています。

 酒造好適米
 お酒のお好きな方であれば、酒造好適米という言葉を、一度は耳にされた事があると思います。
 日本酒に用いられる米の品種の中で、大粒で高度精米に耐え、米の中心部に「心白」という柔組織を持つ為に麹菌の繁殖が良好で、雑味の元となる脂肪分や蛋白質が少ない等といった条件を満たすものがあります。この様な品種としての特性の他に、都道府県単位でその品種の生育に適しているかを確認の上で、公的に認定されたものが酒造好適米です。
 つまり温暖な地域での栽培に適した山田錦を、東北や北海道で栽培しても酒造好適米としての特性は得られませんので、北海道産の山田錦といっても酒造好適米にはなりません。
 概ね、酒造好適米は背が高く、また米粒が大きいために倒伏しやすいなど、食用米よりも作りづらい米と云われ、価格も食用米より高価となりますが、出来あがった酒の質は、飯米を用いた酒に比べ良くなります。そのため、最近では都道府県単位での新品種の開発が盛んとなり、特徴ある酒を醸す為に、その地域に適した酒造好適米を創り出す試みが各地で行われています。

 美山錦
 昭和40年代後半より、高冷地という長野県の地域特性に適した酒造好適米の開発が進められていました。当時の長野県では、白樺錦や高嶺錦などの酒造米が作られていましたが、兵庫県の山田錦に匹敵するような酒造特性が良好な品種とはいえませんでした。
 そこで新品種「美山錦」の開発が進められ、昭和53年より作付けが開始されたのですが、どれほど酒造特性が優れていても、新しい品種が酒造家に受け入れられるのには、時間がかかります。
 伊那農協管内でも、積極的にこの新しい品種を育成していこう、との機運が高まりました。しかし、価格が高いために中々需要が伸びず、農家の方々の生産意欲に水を差していたのです。
 そこで、数年間「美山錦」で試醸を繰り返し、手応えを掴みつつありました私共では、昭和57年に、思い切って全面採用に踏み切る事と致しました。これは先ず第一に、酒質のより一層の向上の為でありましたが、地元での酒造好適米「美山錦」の保護育成と安定確保という意味もあったのです。

 平成27酒造年度より、地元伊那市荒井地区にこだわった「艶三郎」という酒に限り、荒井地区において低農薬にて契約栽培された「ひとごこち」という酒造好適米を用いています。

 産地指定と生産者指定
 ところで日本酒の場合はワインと違い、原料米を自ら生産する蔵元は少なく、一般的には経済連経由にて、品種と等級を指定して買い付けているのが現状です。
 横並びの品質のものを大量生産して大量消費する時代であれば、画一的な米の買い付けであっても、何等不具合はなかったかも知れませんが、現代のようにより個性的で良質なものが求められる時代には、この様な大雑把な指定では不十分と云えるでしょう。
 食用米のコシヒカリで見ても、新潟の魚沼産が尊ばれ、更に何某さんという篤農家が有機栽培したものだと云えば、とても高値で売買される時代です。
 単に長野県産の酒造好適米「美山錦」という括りだけで良いのでしょうか。
 それは長野県産の純米酒ですよ、と言われて、数社の酒をブレンドした酒を勧められるのと同じような事ではないでしょうか。
 話が少し脇道にそれますが、田中康夫知事(当時)が提唱し平成14年より動き始めた、長野県の「原産地呼称管理制度」(以下「本制度」)において、長野県産の日本酒は、県内産の酒米を県内で精米して用い、県内で湧く仕込水にて醸造された純米酒であれば、よほど不味くない限り基本的に認定されます。私共では、本制度の準備段階より、原料の作付け方法などが当然配慮されるべきものとして提言を致しておりましたので、強く違和感を感じました。
 平成15年の夏、田中知事と小一時間、二人だけでお話する機会を得ましたので、今回の本制度では、その点が全く欠落していると、私共の今まで取り組みを踏まえて、異議を唱えさせて戴きました。
 何故原料である酒米について「原産地呼称管理制度」自体が存在しないのに、その加工品である純米酒について本制度の制定を急ぐのか、と。
 単に、長野県産の純米酒として認定されても、お飲み戴くお客様に信州の酒のイメージをお伝えできなくては「絵に描いた餅」でしかありません。先ず、信州の酒についてのイメージの明確化が先決です。
 やるからには単に地元産米を用いた「よい酒」というだけでなく、他の都道府県では容易に真似のできない「信州清酒」のコンセプトを規定し、全国に向けて発信していくべきです。そしてそれが全国的に評価され、実際の商品の売上増に結びつくためには、どうしても国際的に通用する規格が必要であると提言致しました。
 私のイメージする「信州清酒」は、豊かな大自然を背景とした酒です。清潔感溢れる空気、肥沃な大地、清冽な水、冷涼な気候の中で醸された酒です。そして、その環境を守り、環境を育むような形で栽培された米を用いて、その米の旨味を存分引き出した酒こそ、眞に信州らしい酒であると考えます。
 ですから、どうしても酒造りの出発点として、土作り、米作りを意識せざるを得ないのです。
 飯米、つまり食べる米については、平成16年より本制度での規格ができ進み始めましたが、酒米については、まだ未知数です。
 本制度の考え方自体は決して悪いものとは思いませんが、内容の濃いものでなければ「お土産品推奨マーク」と何等変わりはしないと思います。日本酒が米の加工品である以上、より良いものを追求しようとした場合、産地どころか、生産者や作付方法まで踏み込む必要があるのではないでしょうか。
 私共は私共なりの考え方で、世界を見渡しつつ、進んで参ります。

 契約栽培
 原料米を手配する場合、一般的な買い付けの場合でも、「特A地区のものを」といった指定は可能ですが、それ以上の指定は出来ないのが普通です。
 もしより細かな指定をしたいと思えば、個々の農家の方々と話し合い、契約の上で作付をして戴く必要があります。それには当然コストや手間がかかりますが、キチンとした農家の方と契約すれば、一般に買い付ける同品種の米よりも上質なものが安定的に手に入ります。そして何よりも、作付方法が確実で生産者の顔の見える米であるという事の意味はとても大きく、私共の志す「安心な酒造り」の心に添った米であると考えています。
 平成2年になりまして、有機肥料を用い除草剤を1回のみ使う「低農薬美山錦」の契約栽培を始めました。また平成6年からは、完全な「無農薬美山錦」の契約栽培も始め、平成17酒造年度の酒造りには、使用する原料米の全てが無農薬栽培もしくは低農薬栽培の契約栽培米となりました。また契約に際しましては、先ず栽培用水が綺麗で日当たりと風通しの良い山際の田圃を選ばせて戴いております。上流の田圃で使った農薬がそのまま流れ込む田圃や、上流に街があり生活雑排水が多く流れ込む田圃では、いくら無農薬栽培でありましてもお願いできません。
 私共では、この様な環境のもとで良質な米を作られておられる方々に、先ず一般栽培にて酒米の作付けをお願いして、酒米としての特性が出るかを確認させて戴きます。そして次のステップとして、稲が植物として健全に育つ環境を整えるため、有機肥料による土作りを基本とし、また除草剤などの農薬類は、その使用を限定し、最終的には全く使わない形での栽培をお願い致します。
 そして何よりも、農家の方々の人柄です。私共との契約内容を、真面目に守って戴くことは当然ですが、共に語り合い、互い信じ合えるという事の意味は、どの世界でも同じなのではないでしょうか。
 キチンとした原料を用いて、基本に忠実なキチンとした酒造りを行い、キチンとした酒販店様で販売して戴く。このスタイルを守り続ける事が、信濃錦がお客様にとって「安心な」酒であり続ける条件であると考えています。

 農を考える
 日本の農業、とりわけ米につきましては主食という戦略的作物として、永年国の庇護の元に置かれてきました。これは級別の名の元に、酒税の保全を目的として保護されてきた日本酒業界にも似ています。
 日本酒の級別は、既に撤廃され、商品設計の自由度が飛躍的に高まりましたが、その反面、流通が非常に乱れてきたのも事実です。
 一方の米は、一粒たりとも輸入しないと云っていたのは過去の話で、今後TPPの進展に伴って価格と品質のバランスがとれて需要は伸びて行くでしょう。
 特に有機無農薬米につきましては、基本的なコストが低い米国やオーストラリアで生産されたものが低関税で輸入された場合、日本の一般米と殆ど変わらない価格で販売される可能性があります。
 有機無農薬栽培の米国産コシヒカリと、一般栽培の日本産コシヒカリが、同じ食味で同じ価格で売られていたら、どちらを買われますか。
 有機栽培農産物は、時代の流れではありますが、日本の農業を根底から変えてしまう可能性を秘めています。

 一番良いのは、自分が必要とする米を自分で栽培する事です。
 しかし、それができないとすれば、顔の見える地元の篤農家の方々と手を組んで、自らが望む品質の米を安定的に生産して戴き、共に生きて行く事ではないでしょうか。
 私共にとりまして幸いなことは、伊那谷に良い米が育まれる環境が整っている事と、その中で熱心に純良な米の栽培をされておられる農家の方々が多くおられる事です。

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古文書
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原産地呼称管理制度
長野県が、従来の生産振興中心の農業施策から一歩踏み出し、消費市場にターゲットを定めた独自のマーケティング戦略として、信州農産物のブランド確立等を図ることを目的として、平成13年度から「信州農産物マーケティング戦略推進プロジェクト」を発足。この取り組みの一環として、より高い品質の農産物及び農産物加工品を提供していく中で生産情報を消費者へ開示し、消費者の信頼を得ながら地域の振興を図ることを目的とした「長野県原産地呼称管理制度」を平成14年10月に創設し 、まずワインと日本酒から制度をスタート。飯米(食べる米)については、平成16年産米より基準を設けた。酒米については未定。詳細はこちら
 
高遠町三義地区の田圃
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稲作指導会
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